日本政府観光局の発表によると2023年10月は2019年10月と比べ訪日外客数がついに100.8%になったそうです。つまり、インバウンド旅行客がコロナ前の水準に完全回復したということです。確かに渋谷にいると実感として4年前と同じくらいに外国人観光客があふれかえっているのがわかります。

素晴らしいことだと思います。

ところが、日本から海外に出かける人は減少したままだそうです。2023年10月と2019年10月を比べると56.4%、つまり、まだコロナ前の半分程度にしかなっていないのです。

その一方で、JTBの調査によれば国内旅行はコロナ前の96%まで回復しており、ほぼ完全回復したということです。

理由としては、よく言われているように急激な円安と世界的な旅行需要の回復により、海外旅行の費用が高騰したことが考えられます。飛行機、ホテル、現地の食事代、お土産代が軒並み高くなっているので、行きにくくなっているのは事実です。

それに加えて、多くの人が精神的に内向きになっていることも考えられます。費用をかけて時間を使って海外に行くより、国内で楽しもうという嗜好が強くなっているのも事実です。若い世代に「行きたい旅行先」を聞いてトップ10がすべて国内というのが象徴的です。この傾向はコロナ前からありますが、コロナを経て一層強くなったのかも知れません。

世の中ではこれを一時的な現象ととらえて軽く見る向きもありますが、私はそう思いません。日本経済の没落、少子高齢化、巨大な財政赤字、教育の失敗など、日本の根本的な問題とすべて直結していることなのです。

単に海外旅行客が減ったという部分的な問題ではなく、国として大局的な問題としてとらえないと、数年後に取り返しがつかないことになる可能性があります。