色々なものが一斉に値上げされ、世の中全体としての物価上昇が鮮明になってきました。

しかしですね…。

当たり前なのですが、物価上昇にはコストプッシュ型とデマンドプル型があります。コストプッシュ型というのは仕入れ値や人件費、税金などのコストが高くなったために販売価格が高くなって起こる物価上昇です。この場合、販売者としては利幅を引き上げない限り儲けは変わらないので何も良いことはないにもかかわらず、お客様から「値上げしやがって!」などと怒られ、下手すると客離れしてしまうので、踏んだり蹴ったりなのです。

実は弊社が入っているビルも家賃値上げが決定しました。説明を聞くと渋谷再開発で土地の値段が上がり、固定資産税も上がったためだそうです。つまりコストプッシュ型の値上げのようです。

一方、デマンドプル型は需要が増加したことによる物価上昇です。いわゆる「強気の値上げ」は大抵この部類です。ホテルや飛行機などがいい例です。最近はインバウンド観光客がコロナ前を上回るレベルで増えているため、ホテルや飛行機の国際線が高いところでかつての二倍、三倍もの価格になっています。もちろん仕入れ値や燃料代などのコスト上昇はあるものの、それを大きく上回る値上げが可能なのは需要高になったおかげです。この場合、ホテルや飛行機は収益も上昇し、従業員の給料を引き上げたり株主への配当を増やしたりすることができます。

この二つのうち、日本経済に取ってプラスになるのは(もちろん)後者の方です。需要高によって値段が上がって給料や配当が増えれば、国としてお金が回るようになり、景気がよくなる要因になります。一方コストプッシュ側の方は景気がよくなるどころかマイナスに働く可能性が高いのです。

最近、物価高の話を読んだり聞いたりしているとこの二つが混乱されていることがよくあります。似て非なるものなので、間違えないようにすることが大切です。