優秀な人たちは、日本ではなぜ起業しないのでしょうか。
なぜこれほど起業数が少ないのでしょうか。

大学や銀行時代の(私よりはるかに)優秀な仲間たちが会社の不満を語るのを聞くたびに、「それなら起業すればいいのに…」と思ってしまいます。もちろん、個人的な知人に限った話ではありません。トップレベルの大学を優秀な成績で卒業した人たちが、ほぼ全員、官公庁や大企業に吸収されていくのを見ると、名もない零細企業の経営者としてはヒガミとともに残念な気持ちになります。

実際のデータを見ても、日本の起業率の低さは明らかです。

■厚労省:開業率推移(2008~2021年)
日本:4〜5%
米・英・仏:10〜14%

■厚労省:総合起業活動指数(TEA)2021年
(18~64歳人口に占める「起業準備中」または「新規事業を運営中」の割合)
米国:16.5%
カナダ:20.1%
英国:12.6%
日本:6.3%

中国は含まれていませんが、少なくとも他の先進国と比べて日本の起業率が低いことは明白です。

日本で起業が起こりにくい理由は複数あります。

1)起業家の社会的地位の低さと同調圧力
経産省の資料によると、「起業家の社会的地位が高い」と考える人の割合は以下の通りです。

日本:52%
米国:79%
英国:76%
ドイツ:75%
フランス:72%

また、「起業は望ましい職業選択だ」と考える割合も、日本では23%にとどまっています。

米国:63%
英国:56%
フランス:58%
イタリア:64%
日本:23%

日本では起業が社会的に十分に評価されていないことが分かります。他人と違うことを避ける文化もあり、こうした意識が職業選択に大きく影響しているのでしょう。

2)強い安定志向

LINEリサーチ(2025年)によると、高校生の「なりたい職業」は男女ともに国家公務員・地方公務員が上位でした。(男子8.3%、女子7.8%)さらに、教師・教員・教授を含めると、男子15.0%、女子13.0%になります。

また、マイナビニュースによる大学生の就職希望ランキング(2024年)は以下の通りです。

1位:国家公務員
2位:地方公務員
3位:大手企業

理由は、
1位:安定
2位:社会貢献
3位:地元志向

いずれも、強い安定志向を裏付けています。

3)ブランド信仰

安定志向も大きな要因ですが、実はその根底には「ブランド信仰」があると私は考えています。

先日レストランで、隣の方々が「○○さんの息子さんはW大学を出てM物産に勤めているんですよ」「まあ、すごいですね」と話しているのを聞きました。「まだそんな価値観なのか…」と感じてしまいました。(何がすごいのか、さっぱりよく分かりません。)

誰も「その大学で何を学んだのか」「その会社でどんな仕事をしているのか」は気にしていません。肩書きやブランドだけが評価されているのです。

一方で、有名大学を出て大企業に入った人がそこを離れて中小企業の経営者になると、「もったいない」と見られてしまうこともあります。

このような価値観が、起業という選択肢を無意識のうちに遠ざけているのではないでしょうか。

この傾向は文化として深く根付いているため、助成金を増やしたり手続きを簡素化したりするだけでは、大きくは変わらないでしょう。少なくとも10年程度では変化しないはずです。

やはり根本的には、教育のあり方そのものを見直していく必要があると考えます。