皆さん、エスペラント語をご存じでしょうか。

1887年に、世界共通語を目指してポーランドの医師が考案した人工言語です。あらゆる国の人が覚えやすいように、文法を可能な限りシンプルにし、例外も極力なくして作られました。

ところが、既に実質的な世界共通語となっている英語の圧倒的な普及を覆すことはできませんでした。エスペラント語は現在でも愛好家によって使われていますが、世界標準にはなれなかったのです。

キーボードも同じです。

現在広く使われているQWERTY配列は、必ずしも最適な配列とは言えません。一説によると、初期のタイプライターでキーが絡まるのを防ぐため、あえて打ちにくい配置にしたとも言われていますが、その真偽は定かではありません。

その後、1930年代により効率的で最適化された配列としてDvorak配列が開発されました。しかし、すでにQWERTY配列が広く普及していたため、その地位を覆すことはできませんでした。そして、そのままパソコンのキーボードにも受け継がれ、現在に至っています。

言語やキーボードだけではありません。

世の中のあらゆるものに共通して言えることですが、理論上ベストなもの、完全に最適化されたものが、必ずしも採用されるとは限りません。売れるとも限りませんし、普及するとも限りません。

実際には、先行者利益、慣習、ブランド力、人々の慣れ、ネットワーク効果など、さまざまな要因が絡み合っています。

理論上の「最適」と、現実世界での「最良」は、往々にして異なるものなのです。