以前お付き合いがあった翻訳業者で、機械翻訳された英文のネイティブチェックを引き受けないところがありました。

ネイティブチェックは、英語圏の人でない人が書いた英語を米国やイギリスなどのネイティブスピーカーがもう一度チェックし、不自然な表現があれば校正する作業です。私も1人でこの仕事をやっていた頃、自分の書いた英文をブラッシュアップするために何度か依頼したことがありました。

で、その時使っていた業者は、Google翻訳などの機械で訳された文章のチェックはお断りと言っていたのです。

それは確かに理にかなっていることだと思います。もしそれが可能なら、最初から依頼者は機械翻訳を使って大量の文章を作り、チェックだけを業者に出していればいいわけです。翻訳を0から依頼するよりチェック+校正だけの方がずっと安くて済みます。そういうお客さんも多かったのでしょう。

一方、翻訳業者としては収益の機会を失うことになりますが、それに加えて、翻訳者としても機械が書いた文章をチェックするという作業は屈辱的だったのかも知れません。私なら確かにやりたくない仕事です。

ところが時代は変わり、今やAIツールが一般的に使われるようになりました。場合にもよりますが、AIツールで書かれた英文は、非常に完成度が高く、人間が書いた文章と同等、あるいはそれ以上になっている場合も多々あります。おそらくプロの翻訳者、校正者が見ても機械で書かれた文章だとは気づくのは難しいことだと思います。

これからの時代、ネイティブチェックのニーズは下がってくるでしょう。それに代わり、文章が事実なのか、AIによってねつ造されたものなのか、どこかから丸ごと引用していないかなどを精査する、ファクトチェックの仕事が必要になってきそうです。