毎年同じですが、今年も4月に入ってから飛び込み営業の電話がいきなり増えました。その大半は電話に出た途端にわかるくらいに口調がたどたどしく、舌が回っていないレベルのものです。明らかに新人が修行の一環として営業電話をかけてきていることがわかります。

昭和時代からやっていることが変わっていません。この令和の時代になっても、会社に入って最初の修業として新人がいきなり営業に出されることはよくあります。

通常は入社から数日程度、基本的なビジネスマナーや自社の概要、自社製品のことなどを学び、それから営業に出るものですが、中には何も教わらないまま1日目からいきなり営業に行ってこいと言われるところもあるようです。

そういえば10年以上も前、私の後輩がそのタイプの試練に直面し、私のところに相談に来たことがありました。「この状況で売れると思いますか?」と聞かれたので、私は即、「売れるわけないだろう!」と答えました。

会社としても売れるとはまったく思っていないでしょう。そこで新人に最初から苦労させ、学ばせるという方針なのです。初日から学生時代とは違う社会の厳しさを知り、自分の知識、能力不足を知り、そして目標を作り、そこから勉強を始めるというわけです。私自身もその方法で鍛えられ、今振り返って思えば、当時の修業が良い勉強になり、精神的にも強くなったと思います。

その一方で、これが本当に最良の方法かと疑問を持たざるを得ません。

まず今の時代に多数の新人が「こんなはずではなかった!」、「こんなこと、やってられない!」と思い、大きなショックを受けてしまうことは想像に難くありません。そしてあっさりと会社を辞める人もいるはずですし、会社としてはそれだけで大きな損害になるはずです。

また、そうした新人修行の営業を受けるお客さんのほうも迷惑です。見方によっては新人教育を自社でやるのではなく、お客さんに任せにするということになります。お客さん側としては、迷惑この上ないことです。

このやり方が精神修業として有効なのはわかります。しかし今の時代、特に生産性の改善を求められている中、このような昭和的な方法が良いはずはありません。もっと論理的で効率的な方法に取って代わられるべきだと私は思います。