経済学で「価格弾力性」という言葉があります。

学生時代、勉強の大半は「机上の空論に過ぎない」と思い大嫌いだった私が「超・面白い!」と思った数少ない理論の一つです。

価格弾力性というのは、価格の変化に対して需要がどのくらい変化するかということです。例えばちょっと値上げしてすぐに売れなくなる商品は「価格弾力性が高い」ものなので、反対に値下げすれば売れるようになるわけです。一方、価格を下げても需要が変わらない商品でれば、「価格弾力性が低い」ものなので、値上げすれば利益があがるはずです。

選択肢が多く競争が激しいものや無くても困らないもの、急ぎでないものは一般的に価格弾力性が高く、絶対に必要なもの、唯一無二のものは価格弾力性が低いといわれています。同じ商売、例えばガソリンスタンドなら何軒も並んでいるところは価格弾力性が高いためちょっと値上げすれば他店に流れてしまいますし、他店に先駆けて値下げすれば、売れるようになるでしょう。他方、田舎の一軒しかないガソリンスタンドなら価格弾力性は低く、高くてもお客さんがきます。

AIで簡単に描いた絵をプリンターで印刷したものは価格弾力性が高いため、数百円程度なら払う人がいても、何万円も払う人はいませんね。歴史に残る世界的な画家が描いた貴重な絵画なら、どんなに高くても買う人がいるものです。こちらは価格弾力性が低いということです。

最近私が痛感したのは大阪空港のゲート近くにあるタコヤキ屋さん。

うーむ。確か数年前は600円くらいで、それでも「高い!」と思った記憶があります。小麦粉も卵も値上がりしているのでやむを得ないとは思うものの、それでも900円というのは、関西人として高すぎるように思います。でも大勢並んでいます。

(タコヤキなんで子供の頃は近所の店で200円なのに夜店で400円と書いてあるのを見て「高い!」と思ったものです…。まあ時代が違いますね。)

しかし空港の乗り場近くで、「そういえば大阪なのに一度も名物のタコヤキを食べていなかった!」とか、「帰る前に、もう一度本場の味を楽しんでおこう!」と思う人は多少高くても買うでしょう。価格弾力性が極めて低いわけです。もしかすると1500円くらいでも食べる人が多いかも知れません。

商売の面白いところであり、厳しいところでもあります。