最近、「ユーザー体験」という言葉をよく耳にするようになりました。これは、明らかにデジタルマーケティングの用語にある英語「UX」(User Experience)の直訳です。

しかし、日本語で「ユーザー体験」と言ってしまうと違和感があります。「このホームページの導線を改善することによりユーザー体験を向上させて…」なんて、意味は何となく分かるものの、しっくりきませんね。私はこの表現が嫌いです。

何がおかしいのかちょっと調べてみたところ、次のことを発見しました。

まず日本語の「体験」とは、次の意味があります。
「自分で実際に経験すること。また、その経験。」(デジタル大辞泉)

次に英語のExperienceとは、次の意味があります。
「knowledge or skill that you gain from doing a job or activity / something that happens to you or something that you do, especially when this has an effect on what you feel or think」 (Longman Advanced American Dictionary)
つまり、「仕事や活動から得られる知識やスキル/自分に起こること、または自分が行うこと、特にそれが自分の感じたり考えたりすることに影響を与える場合」ということです。

日本語の「体験」が単に経験することなのに対して、英語はもっと深い意味がありますね。経験だけでなく、そこから得られる知識、スキル、また経験から感じることや考えに影響することなどを含めて「Experience」と呼んでいるわけです。こちらの方がUXの趣旨にピッタリきます。

ホームページを改善する話のUXなら、単なる体験の向上ではなく、そこからユーザーが得られる知識や満足度合い、快適に使うことによる気持ち良さまでが本来のUXであるべきなのです。しいて日本語で表現するとすれば、「ユーザーの使い勝手」「ユーザーの使用感」「ユーザーの利用満足度合い」、さらにいうと「ユーザーが得られる印象や感動」という感じです。

「ユーザー体験」という日本語が独り歩きし、UX本来の意味があやふやにならないように気を付けたいところです。