以前の仕事で私が営業していた、銀行などの大企業が導入する億単位の大きなシステムの話です。先日電車の中で、その業界(と思われる)人たちが話しているのを聞いて、ふと思い出しました。
組織が大きければ大きいほど、金額が大きければ大きいほど、導入期間が長ければ長いほど、システムの入れ替えには抵抗があるものです。例えば1日の導入で済んだ百万円のシステムと、導入作業に1年間かかった1億円のシステムとでは、「入れ替えましょう。」という提案に対する抵抗が全然違います。
もちろん百万円と1億円では金額が違うのですが、実は銀行クラスならそれほど大きな違いではないのです。それよりもむしろ、1年かけて苦労して導入したものを無しにするという方が抵抗があるのです。
その場合、「新しいものに入れ替えましょう。」ではなく、「既存システムを活かしつつ、強化しましょう。」という提案の方がすんなりと受け入れられることがよくあります。実は新しくするのと金額的には同じで、しかも実質的には完全入れ替えになってしまう場合でも、「既存を活かす」というだけで受け入れられやすくなるものです。担当者としては、たとえそれを理解していたとしても、自分が1年かけたものが「捨てられる」というより、それを大切にして活かすという方が気持ち的に良いのは当然です。
大きなプロジェクトでなくても、数十万円のホームページ作成でも同じことがあります。今のホームページを完全に入れ替えるというより、今のものを活かしつつ改善という方がしっくりくることがあるものです。
真新しいこと、これまでと違うことを避けようとする、日本的な一面なのかも知れません。