「出戻り就職」というのは、辞めた会社にまた就職するということです。よく「Uターン就職」と混同されるのですが、Uターン就職は自分の故郷に戻って就職することなので、まったく異なります。会社によっては「アルムナイ採用」ともいいます。アルムナイというのは卒業生という意味ですね。
そういえば、私が最初に勤めた古典的大企業を辞める時に、「一度辞めたら帰ってこられないぞ。わかっているな?」と念を押されたのを今でも鮮明に覚えています。当時は新卒で就職した企業に定年まで勤めるのが一般的であり、その前に辞めることが大きな裏切り行為のように思われていたのです。そんな文化で、出戻りというのは考えられなかったのでしょう。今とは全然違いますね。
さて、その出戻り就職が最近増えているそうです。出戻って再就職する人としては会社のことをよくわかっているし、中の人も知っているし、営業ならお客さんも知っているので、非常に仕事がしやすいという大きなメリットがあります。採用する会社側としても、相手の能力や人柄がわかっているので、低リスクで雇用するこができるメリットがあります。会社のこと、仕事のことを教えることなく即戦力になるのも魅力でしょう。
ただ、実際のところで戻り就職する人の多くは、「辞めて転職した先が思ったより良くなかった。前の方が良かったので戻りたい。」というのが本音ではないでしょうか?
元の会社に勤めていた時は、隣の芝生は青く見えたのかも知れません。職場の良さ、ありがたさに気づかず、他が良く見えたというわけです。そして他社に移って初めて前の良さに気づくのです。「失って初めてわかるありがたさ。」ということです。
一方会社側としては、一度辞めた人から戻りたいと思われるということは、それだけその会社が素晴らしいことを意味しています。給与面や待遇面だけでなく、職場環境、仕事のやりがいもトータルで良くなければ、出戻りする人はいません。
辞めた人に戻りたいと思われるような会社を作ることが、経営者の課題なのだと思います。