何回か書いていますが、最近ある日本の大きな会社との契約で再度痛感しましたので、また書きます。
その契約は、最初紙の契約書を製本して作り、社印を押して印紙を貼って郵送して…という昭和時代から何ら変わらぬ方法で進めようとしていたので、私の提案により電子契約書を使うことになったのです。
お客様側も新しい方法を採用しようと決めてくださったのでしょう。それは素晴らしいことだと思います。
ところがですね…。
日本企業なので、当然、会社としてかわす契約書上の契約者は会社名+代表取締役に決まっているのです。確かに、これ以外になることはごく一部の超大企業を除き、まずありません。個人事業レベルから上場企業まで、ほぼこの名義です。
しかし大きな会社になればなるほど、実際に代表取締役が自らハンコを押すことはありません。数十名規模の会社なら代表取締役が押すことも多々ありますが、100名を超える規模なら、最終決議は常務クラスで行い、押印はその下の担当者が行うのが一般的でしょう。社長へは報告だけ、金額によっては報告も行かないこともあります。
一方、電子署名は契約名義人本人が直接行うのが原則です。つまり、代表取締役がメールを受け、自分の手を動かして電子署名しなくてはいけません。会社の運命がかかるような契約ならともかく、業者に委託する数百万円程度の契約で大企業の代表取締役が手を動かすことは非現実的でしょう。かといって、契約書の名義を課長、部長クラスにすることも非現実的です。
これが欧米の企業なら、数百万円程度の契約なら担当マネージャクラス、つまり課長や部長の権限で行うことができます。契約書もその名義でいいのです。すると、電子署名も直接行うことができます。
そう考えると、今の日本の商慣習で電子契約書が普及するのは非常に厳しいような気がします。まずは組織の仕組み自体を変えていく必要がありそうです。