私が社会人1年目で銀行の融資課に勤めていたとき、ある取引先企業の融資申し込みで目的に「納税資金」と書いてあったのを見て疑問に思った記憶が鮮明にあります。

税金というのは利益に対して課せられるものなので、その資金がないというのはイマイチ理解できなかったのです。また消費税は(よく言われているように)負担するのは100%消費者であり、企業はその資金を預かっているだけのことのハズです。なので、その資金がないというのも理にかなっていません。

まあ今思えば。私は本当に何もわかっていなかったのですね。

まず利益が出るのと現金が手元にあるのは違います。売掛が発生した時点で売上はあがるので、現金が入ってきていなくても利益は計上されており、課税対象になっています。税金は現金が入ってきていなくても容赦なく課せられ、決められた期日までに現金で支払うことを要求されるのです。当然、企業としては資金不足になります。

もちろん企業にとって利益というのは税金を支払うためだけにあるものではありません。買掛金、給料、借入返済などなど、多くの費用となって出ていくものです。利益が出たからといって大半を税金に持って行かれてしまっては、企業活動ができなくなってしまいます。

そして消費税。「お客様から預かっているお金」と言いますが、では1100円のラーメンを食べる時、「ラーメン代は1000円で税金が100円だな」と考える人はいますか?1人もいないでしょう。間違いなく、ラーメンが1100円なのです。お客さんとしてはラーメンに対して1100円払っているのであり、1000円ではありません。反対に店側としては、努力して1100円の価値があるものを提供しなくてはラーメンを売ることができません。

「消費税は預かっているお金」というのは理論だけの話であり、机上の空論、おとぎばなしのようなレベルなのです。

税金に対して文句を言っても前に進みません。私たちビジネスマンとしては、そんなことは無視し、それを上回る価値をお客様に提供することに専念するしかないのです。