帝国データバンクの調査によると人手不足の企業が全体の51.0%を占めており、過去にない高水準が続いているということです。多くの業界でコロナ後急速に需要が回復したため、採用が追い付いていないのは想像に難くありません。またコロナ時の鎖国政策や円安により外国人人材が大きく減少しているのも理由でしょう。

その一方で、少子高齢化により労働力人口が減っていると言う人もいますが、それは違うと思います。日本の人口は確かに2005年をピークに年々減少しているものの、労働力人口は、実は増えているのです。20年前の1993年が6,615万人だったのに対し、2023年では6,925万人になっています。つまり30万人も増加しています。表には出てこない非正規労働者を入れると実は更に大きいかも知れません。

労働力人口が増えているのは65歳以上の高齢者や女性の労働者が増えているためであることは明らかですね。ちなみに1985年に決まった男女雇用機会均等法より前の労働力人口は5,889万人なので、やはり女性の労働人口が増えているのでしょう。(数値はいずれも政府統計)

しかしですね…。
1980年代、1990年代と比べると、今の日本は大幅にIT化、機械化、自動化が進んでいます。特にあらゆるものを手作業で行っていた1980年代と比べると雲泥の差があります。支払い、在庫管理、計算、伝票、帳簿、報告書、提案書…などかつて人間が手で行っていたことは、今や大部分が電子化されています。駅の改札、レストランの注文も多くは自動化されていますね。食器洗いはもちろん、配膳や掃除だって自動化されつつあります。オンライン会議が普及し、訪問による打ち合わせや出張も減りました。スマホを使えばちょっとしたスキマ時間ですら効率的に仕事ができるようになりました。

それなのに空前の人手不足というのは、一体どういうことなのでしょう?しかもこの20年間は日本経済が停滞しており、経済成長に伴う人手不足も当てはまりません。

もしかすると、世の中色々なことが電子化されて便利になっているように見えつつ、日本は労働面で何も変わっていないのではないでしょうか?電子化されても何一つ効率化されていないのではないでしょうか?

いい加減な情報にだまされず、また、技術の進歩に浮かれていないで、一度手を止め、なぜ労働力が不足しているのかよく考えてみる必要がありそうです。